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「ヒトラーのはじめたゲーム」


ヒトラーのはじめたゲーム
アンドレア・ウォーレン / / あすなろ書房
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ポーランドの海沿いの町に住むジャック少年とその家族の戦いの物語だ。
フィクションではなく実話。ジャックの証言をもとに、当時の様子が再現されていく。題名から分かるとおり、ジャックたちの戦いは、ナチスとの戦いであり、差別との戦い、人間の醜さとの戦いだ。
著者はアメリカのノンフィクション作家アンドレア・ウオーレン、女性だ。

まず先にomomoが読んだのだが、実話とは思わず読み進めたが、あまりの内容に途中で気持ち悪くなったと言っていた。

改めて、ナチスがユダヤ人にしたことは、想像を絶する、理解を超えたものだったと知った。
人を人と思わない行動は、不快すぎて本当に気持ち悪くなる。
しかし、この気持ち悪さは、自分もしかねないことだからかもしれない。
絶対的支配者の命令に逆らい、自分の良心を貫くことが、果たしてできるだろうか?と読みながらどんどん自信を失い、不安になった。その不安が気持ち悪さを呼ぶ。

そして、ショックだったのは、ジャックたちは予告なく戦争に巻き込まれていったことだ。ジャック達は、実に平和な日々を送っていた。戦争の噂はあっても、自分たちの平和な日々は永遠に続くとさえ思っていた。
しかし、戦争が始まれば、どんな人間もなんの抵抗も出来ないまま、巻き込まれていく。それが事実だと、この本で実感した。

すごく怖くなった。
なぜなら、最近の日本はどうもおかしくなっていると思うから…。
じわりじわり戦争が近づいて来ているようで怖いのだ。
周りを見回せば、実に平和で満たされている。しかし、市民の平和など、いったん国家が戦争を始めたら、忘れ去られるものなのだ。
私たちは、それを歴史で知っている。
知っているはずなのに、すぐに忘れる。自分たちだけは例外だと過信する。

ジャック少年の戦争は、突然やってきて、なんの前触れもなく終わった。
しかし、戦争は終わっても、傷ついた体と心はなかなか回復しない。奪われた家族も二度と戻ってこない。個人は、平和から取り残されたままだ。

ジャック少年は、知恵と勇気で強制収容所から見事に生還した。
これは、大変幸運なことだ。奇跡といってもいいくらいだ。
そのため多くの人が、「幸運だった」と彼に起こったことにけりをつけるだろう。
しかし、戦争の傷、差別の傷は、簡単に消し去られるものではなく、一生つきまとう。たとえ、その後の人生がどんなに素晴らしくても、すべてがチャラになることなどないのだ…。
私は、このことを忘れないでおこうと思った。
そして、戦争はぜったいに嫌だ!!



蛇足ながら、先日知人から聞いたはなし。
最近は学校の校舎内に、平和の象徴・鳩のモチーフを飾ることが禁じられているとか。
永久平和、世界平和はもはやあり得ない。だから、永久平和を子ども達に教えるのは間違っているという考えからだと言う。
日本、特に石原の東京は、とうとうここまで来たようだ。
涙が出てくる。
by happywacoco | 2008-03-25 20:45 |
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