病院での待ち時間に
「下流社会 新たな階層集団の出現」三浦展<光文社新書> を読み終わった。 タイトルが気になって読んでみようと思った本だが、思っていたのとはちょっと違う内容だった。マーケッターの立場から書かれているので、あくまで消費する人間を歓迎する傾向があったのだ。そして、下層に分類される人々は、稼がず、消費活動にも消極的な、主に30歳前後の人々。 そのグループの人たちに、著者は手厳しい。 「下流とは、単に所得が低いということではない。コミュニケーション能力、生活能力、働く意欲、学ぶ意欲、消費意欲、つまり総じて人生への意欲が低いのである。・・・」 とバッサリ! 著者は、年収・職業、既婚か未婚か、本人の階層意識等をアンケート調査し、その結果をもとに、上・中・下という3つの階層に区分して述べているわけだが、上流といってもは、いわゆる上流社会の上流ではない。あくまでも庶民のなかでの上・中・下。 ところで、興味深かったのは「階層意識別の食生活」という項。 女性の欲求調査の結果だが、本人が下層と思っているグループの女性ほど、 「朝食を食べない」 「食事時間が不規則」 「料理が面倒」 「よくコンビニ弁当を買う」 「食べることが面倒くさいと感じることが多い」 の項目に「当てはまる」と答えた人が多かったという。 著者は言う「下流の女性ほど、食生活に対する意識が低い」と。 これは、母親としてドキリとした。 食育がブームのようになっている昨今、これは大事だなと素直に思った。 そして、診察後思いついて、久々に病棟に上がっていくことにした。お友だちだったCちゃんに友チョコを渡そうと。 Cちゃんは、元気そうで、チョコも喜んでくれた。そして、ママとも話をしたのだが、そのときCちゃんママは言った。 「今はどの病室もいっぱいなのよ。摂食障害の子が増えてね・・・」 思春期病棟と呼ばれているomomoがいた病棟には、過食の子、拒食の子が結構いる。 食べることにつまずき、多くはやせ細って入院してくる。歩行が禁止される子もいる。 omomoの病室にいたある子は、食事の時間になると、カーテンを閉め、そのなかで食べ物とひとり格闘した。みんなと和気藹々と食事をする余裕がないのだ。 医師に食べなくては退院できないと言われるから、仕方なく食べる。だから、ゆっくりとしか食べられない。人に見られていては食べられない。食べることが、苦しみに近い子たちだ。 摂食障害に陥る理由はさまざまだろうが、概してみなおとなしく、自己主張が苦手そうな子たちだった。静かな良い子たち。 そんな優しい子たちが、何ヶ月もの入院生活を余儀なくされ、退院してもまた病院に舞い戻ってきた。 そんなことで、omomoの病室で私は「食べること」という意味を考えることとなった。 そして「食べること」に前向きなことこそ、生きる意欲の表れなのだと、気が付いた。 体重増加に悩み、食欲が恨めしいと思っていたのは、実はとても幸せな(傲慢な)悩みだったことに気が付いた。 「食べる」というのは、生き物にとってなにより大事な行為なのだ。 そして、食べ物が豊かにある現在、そのことを忘れがちであるのだ。 ぼんやりそんなことを思い出しながら、病棟を後にした。 さらに、話は続く・・・。(長くてごめんなさい) で、帰って夕飯を食べていた時、 omomoが給食時間にクラスのMちゃんが、先生に叱られて泣いてしまったという話を始めた。 Mちゃんは、体が小さく、食も細い。よって食べるのがとても遅い。 しかし、昨日は、給食後学校のイベントがあり、6年生は早く食べなくてはいけなかった。でも、Mちゃんはいつものペースで食べてしまい、その遅さに先生が業を煮やして、かなりきつく怒ってしまったという。 その話を聞き、先生の焦りを理解しつつも、苦い思いが残ってしまった。 以前の私なら「6年生なんだから、給食くらいチャッチャとすませなくっちゃ!」なんておもっただろうが・・・omomoの入院生活を経た今は、食事を焦らされる子どもの苦痛の方を重んじてしまう。そういう給食体験が、将来なにかの障害につながらないか心配になる。 多くの小中学生にとっては、生きがいに近い給食だろうが、そうじゃない少数派もいるんだと、できるだけ多くの人にわかって欲しいと思った。 (話は戻るが・・・) 願うのは、どの子も中流以上に生きて、自分を肯定できる将来だ。 そのために、親や教育者は学歴、学力に目を奪われず、もっと食生活、食べること、食べる時間に、繊細になったほうがいいのではないかな。 それから、食べることで、子どもたちが傷つくことがないように、親は(特に女の子の親)は、気をつけないといけない。 お勉強ができるより、綺麗でオシャレであるより、 上手に食べ物を選べて、家庭の食事を三食楽しみにできる女の子に育てたい。 そういう子こそ、幸せな子だと、肝に銘じようと思った。
by happywacoco
| 2006-02-15 15:06
| モロモロ♪のこと
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